音楽コラム集|映画研究部NOAH
2020.05.28
幸せを掴んだと思った束の間、離婚。その日、あれだけ苦労して越えたベルリンの壁が崩壊する。 音楽活動を始め、独り食いつなぎ、ベビーシッターのバイト先の息子トミーのロックへの情熱を知っ たヘドウィグは、彼女のロック全てをトミーに注ぎ込み音楽活動を共にする。 次第に相思相愛の関係となっていくのだが、ヘドウィグの体の秘密を知ったトミーは逃げてしまう。
数年後、ヘドウィグのオリジナル曲を自身作と偽り全米デビューを果たし、ロックのアイコン的存在と なったトミーは全米ツアーを敢行。 ヘドウィグは復讐のため自身のグラムロックバンド「THE ANGRY INCH」を率いてストーカーの様にくっついてツアーを行っていく。復讐作戦も功を奏し、 ヘドウィグはメディアに取りだたされ、一躍時の人となりロックスターの夢が現実となろうという時、ベルリンの壁の様に彼女の中で何かが崩壊していく。 自分のカタワレとは何か。愛の起源とは何なのか。
・監督、脚本、主演ジョン・キャメロン・ミッチェル 舞台、映画も共に監督、脚本、主演、原作を務めたのはジョン・キャメロン・ミッチェルだ。 舞台ではヘドウィグとトミーの 2 役も演じていたそう。 自身がゲイであることを公に活動しており、ジェンダーレスなキャラクター感のあるイギーポップや デヴィッド ボウイなどのグラムロック、パンクではラモーンズやセックスピストルズから大きな影響を受けたことが、ヘドウィグのキャラクター像にも大きく影響している。 LGBT のカリスマ的存在でヘドウィグの映画化でカルト的人気を博し、今もなお若者達から支持を受けている。
・感想 ミュージカル映画ということもあり、音楽シーンが満載だ。 私も実際ミュージカル映画というジャンルにあまり触れてきたという訳ではないが、日本だと THE YELLOW MONKEY、すかんち、毛皮のマリーズなどの「グラムロック」と呼ばれる音楽が好きな方や、2018 年に話題になった「ボヘミアン・ラプソディ」 を見て感動した方は気に入ると思う(あれ程 大規模で、美化されている作品ではないが...)。 はみだし者、マイノリティー、パンキッシュ、バイセクシャル。 こんな要素がこの作品には詰まりに 詰まっており、更にはヘドウィグのアップダウンの激しい壮絶な人生と劇中のグラムロックがドロドロと絡み合う。 トランスジェンダーで喜怒哀楽の激しいヘドウィグというキャラクターをグラムロックサウンドが充分に引き出していく。 更には多くのミュージカル映画では撮影段階では口パクでの演技が常識なのだが、本作ではバンド 隊は音声に合わせた当て振りなものの、ヘッドウィグ演じるジョン・キャメロン・ミッチェルはシーン度に生歌で収録している事が演奏シーンをよりリアルにしているのかもしれない。 それ故、ヘドウィグの心理状況がヒシヒシと伝わり胸がギューっと締め付けられる。 映画としても、カメラ目線を禁止にしたり、同性愛や虐待などを題材にするなど、現在でもタブー視されるが、それまた常識に囚われない。 この映画のテーマは「愛」の他には「壁」だと思う。性の壁、ベルリンの壁、心の壁、常識の壁、 etc... 中学生の頃、初めてロックに触れた時に感じた壁をブチ破る様な得体の知れない衝動を見る度に感じ られる。 冒頭シーンの 1 曲目「Tear Me Down」を聞いてビビビッときた方はきっと最後まで楽しめる作品に なる事でしょう。READ MORE
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