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音楽コラム集|From アメリカ

【コラム】ざっくりアメリカ 第3回「本当に大切なのは、何?」

2017.05.13

行くぜ! アメリカ! なるぜ! ビッグに! 昭和バンドブームのスローガンみたいですね。 いろいろ曖昧です。 一体、アメリカのどこに、何回行って、どれくらいの規模の「ビッグ」になるんでしょう? そりゃぁ、1年に100回以上アメリカ国内でライブをやって、10年以上それを継続したら、それなりにライブのやり方とか、どんなライブが受けるとか、お客さんとの接し方とか、ある程度理解できるようになって、ライブだけで生計立てられるくらい「ビッグ」になれる可能性はあるでしょう。 そんな感じで、目ぇギラギラさせながら、過去10年以上、毎年100回くらいライブをやってお金を稼いで、「アメリカのちょっと良い街で、屋根とご飯のある生活」ができるくらい「アメリカでビッグ」になっている日本人バンドもいます。 遠い宇宙から来て、頑張ってアメリカでツアー活動して「ビッグ」になっているバンドもいます。 たとえば、Peelander-Zさん。 惑星Pから来ている宇宙人ですが、ライブ1,500回(確か)くらいやっています。 実際、ライブステージは鼻血が出るほど楽しいです。 ぜひアメリカのどっかの土地まで見に行ってください。 Peelander-Z http://peelander-z.com/ でも、1回や2回、アメリカのどっかのクラブでライブをやったくらいで、どこかのお偉いさんの目にとまって、その次の週には有名人。 なんてことは、まずありません。 現実として、そんな事例はないです。 この間も、プロデューサーさんに「日本人バンドの曲は、売れた試しがないからねぇ。」とサラっと言われました。 サラっと、笑顔を返しましたが... そもそも、海外旅行に2泊3日くらい行って、海外有名芸能人やらモデルさんやらとお友達になって、そのままお付き合い、とか、まずないです。 仮にミラクルが起きてお友達になっても、その後、頑張ってこまめに連絡取り続けなければ「付き合い」にはなりません。 ご自身の価値が白トリュフ級にすごいのであれば、その時点でミラクルですが、書いてる僕が基本ミラクルじゃないので、そんな話は知りません。 聞いたことありません。 あと、日本とアメリカだと、価値観が全然違います。 日本で受ける音楽やライブでも、「アメリカ仕様」にアレンジしたほうが良いです。 実際何が受けるかは、100回くらいライブをやって、やっと見えてくるくらいです。 ちょっと変な例えですが、多分、日本の国産松茸を喜んで食べるアメリカ人はあんまりいません。 お腹がすいてきました。 なんだよ! 結局、ダメって話かよ! どうなんでしょうね? 多分、何事も時間がかかるってだけなんだと思います。 長く付き合った2人が結婚式を挙げようとしても、向こう半年くらいは式場が埋まっています。 大切なのは、「末長く付き合う前提」だと思います。 今は英語が苦手で、今は誰かが助けてくれても、最終的には自分でコミュニケーションを取れなければ英語圏での仕事は無理です。 自分だって、成長しなければいけません。 同じように、初めて行ったアメリカのライブハウスの店長さんが、「良い人なんだけど、ちょっと違う」みたいな感じでも、ちゃんと大切にすると何かがあります。 たとえば、2回、3回と回を重ねるごとに、お客さんを多く呼んでくれたり、「ビッグ」にしてくれる「お偉いさん」をお客さんに呼んでくれたり、するかもしれません。 話しかけてくれるお客さんにも、優しくしましょう。 次回もライブに来てもらえたら、嬉しいですし、お友達を連れてきてくれたら、もっと嬉しいです。 現実的な例として、最初にライブを観に来てくれたときにはバイトで生計を立てていた子が、3年後には、ちょっと有名なテレビ番組の関係者になっていたりとかします。 もっと「ビッグ」な「チャンス」を求めて、フラフラ新しい場所で新しいお客さんを求めるよりも、目の前のお客さんを大切にすることが大切です。 最初に来てくれるお客さんは、噂や宣伝でのお客さん、箱の常連さんなど、いろいろいるでしょうが、その人たち全員が、2回目、3回目、4回目に同じ場所でライブをするときに、また見に来てくれるように頑張るのが大切です。 「1回目にライブをしたときに、お客さんが5人しかいなかったのに、2回目は、その5人が友達をたくさん連れてきて100人くらいのお客さんが来た。」 理想のシナリオです。 収入も大きく増えます。 本当にあり得る、本当にありがたい話です。 3回目以降も頑張りたくなります。 逆もあります。 「何万人級のフェスで演って、次の年ピンで興行打ったら、誰も来なかった。」 最悪のシナリオです。 怖いですね。 そんな夜は、心が折れます。 お客さんは、大切にしましょう。 ジジイの説教みたいになりましたね。 それでは次回は、現実問題のアメリカでのライブブッキングとか、「まずは、何をすれば良いのか?」について書きます。 プロフィール 斉藤健太郎 ギタリスト。1974年生まれ。ベストヒットUSA等、80年代音楽テレビ番組の影響をモロに受け、アメリカ音楽に没頭。そんなこんなで、18歳のとき、米国西海岸の某音楽専門学校に入学するため、渡米。1年プログラムの米国音楽専門学校において、日本の常識と米国の常識の違いに戸惑って、自分の無能さに落ち込んだ挙句、一生懸命練習した結果、優秀生徒の一人として表彰される。その表彰状で、ニューヨークにある某音楽大学のジャズ科に、半ばハッタリを使って奨学金をもらい入学。在学中に、当時の有名ニューヨークジャズメンたちの切実な生活状況等々を目の当たりにし、「ジャズは、頑張っても売れない!」という理由で、ジャズ科の生徒2人を口説き、3人でパンクバンド(名前は秘密)を結成。唯一の日本人(英語に訛りがいっぱい)であるにも関わらず、ボーカルも担当。結成1ヶ月後あたりに、某インディーレーベルから、ほかのインストゥルメントプロジェクト(ジャズ)を買われた挙句、レーベルをちょっと騙してデビューアルバムを製作。ギターは、1日平均10時間くらい練習していたものの、歌なんて、ほとんど歌ったこともないのに、作ったデビューアルバムがアメリカCMJにて新作部門4位、全体チャート80位以内を記録。その後、調子に乗って、いろんなバンドで、米国、欧州、台湾、オーストラリア等をツアー。 現在は、OTONANA Trioを率い、2012年以降、5枚のフルアルバム発売。年間平均70回の興行をアメリカにて遂行中。 2017年は、グラミー賞受賞プロデューサーであるBob Cutarella氏を迎え、新譜の録音中。 公式サイト www.otonanatrio.com