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音楽コラム集|映画研究部NOAH

【コラム】映画研究部NOAH 第35回「サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ」

2021.06.15

サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ

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【あらすじ】

メタルドラマーのルーベンは、聴力を失い始める。医師に今後も悪化すると言われ、ミュージシャンとしての自分も人生も終わりだと考える。恋人のルーは元ドラッグ依存症のルーベンをろう者のコミュニティーに参加させ、再びドラッグに走ることを防ぎ、新しい人生に適応できることを願う。ルーベンはろう者のコミュニティーで歓迎され、ありのままの自分を受け入れるが、新しい自分とこれまで歩んできた人生とのどちらかを選ぶのか葛藤する。

(引用元:https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B08P2H4C76/ref=atv_dp_share_r_em_25f0d423570a4

【恐るべき音響演出】

ミュージシャンにとって最も重要といえる五感の一つである聴覚。その「聞こえる」という当たり前を突然失った男をあまりにもリアルに描いた作品がこのサウンド・オブ・メタルである。本作品では聴覚を失った状態での主人公ルーベンの「聞こえ方」を演出したシーンが多々あり、視聴中している自分も聴覚を失ったかのような疑似体験ができる。

没入感を味わいたい方にはノイズキャンセリング付きのカナル型イヤホンをしてご視聴頂きたい。

聞こえない演技はサウンドブロッカーを付けて行ったという主演リズ・アーメッドの演技は必見である。

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【デフ・コミュニティー】

英語ではろう者を「Deaf(デフ)」と呼び、その文化やコミュニティーには歴史がある。本作はデフ・コミュニティーの様子を非常に鮮明に描いており、実際に聴覚に障害がある俳優が出演していることでドキュメンタリーを観ているかのようなリアルさを感じることができる。作中に俗世から離れたデフ・コミュニティーに暮らすことになったルーベンは最初自暴自棄になるが、聞こえない生活に馴染んでいき、その中で得る喜びを知るようになる。本編の最初の映像のライブ・ハウスの爆音と、デフ・コミュニティーでの静かな暮らしは非常に対照的である。

【難聴はハンデではなく、治すものではない】

本作に登場するコミュニティーの責任者ジョーの言葉であり、信念である。

難聴により音楽活動の休止を余儀なくされ、恋人と離れることになったルーベンは、デフ・コミュニティーでの暮らしを受け入れるようになってからも、以前の生活に戻りたい気持ちを諦めることが出来ず葛藤する。ついには以前暮らしていたトレーラーや自身のドラムを売り、人工内耳の手術を受け念願だった聴力を取り戻すことになるが...ぜひ本編をチェックして頂きたい。

映画全体を通して言葉ではない仕草や表情による感情表現が印象的で、最初は「聞こえない」という状態に恐怖や不安を抱くが、徐々に受け入れられるようになってくる。絶望的な状況にも、必ず道はあるという希望を貰える作品だ。現在Amazon Primeオリジナル作品として配信中。

【映画情報】

原題:Sound of Metal

上映時間:120分

監督:ダリウス・マーダー

キャスト:リズ・アーメッド オリビア・クック ポールレイシー

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画像引用元:

https://www.amazon.co.jp/%E3%82%B5%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%96%E3%83%BB%E3%83%A1%E3%82%BF%E3%83%AB-%EF%BD%9E%E8%81%9E%E3%81%93%E3%81%88%E3%82%8B%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E3%81%93%E3%81%A8%EF%BD%9E-%E3%83%AA%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%A1%E3%83%83%E3%83%89/dp/B08P2H4C76 Amazon Prime Video

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